6 コミュニケーションで大切なこと

 わたしは、中学生のころから英語が大好きで、大学のころは、アメリカ人の留学生と遊ぶこともありました。だから、最近はまったく英語を勉強していなくても、旅行英会話の本も買ったので、イギリスに行ってもどきょうさえあれば何とかなると思っていました。

 でも、その甘い考えは、ロンドンのヒースロー空港に着いて、入国しんさのところでもろくもくずれました。審査官の言っている言葉がまったく聞き取れず、「観光です。」という答えを言えなかったのです。
 そして、ロンドンの街の中でも、ホテルや三越デパートの場所を現地の人に英語でたずねたときも、きちんと通じたにもかかわらず、教えてくれている人が親切に教えてくれているのに、何を言っているかがよく分りませんでした。

 バースという街のバーガーキングハンバーガーをたのんだ時も、店員の英語の速さにぼうぜんとしてしまい、まったく反応できませんでした。店員は、「フライドポテトをつけるのか。」「飲み物は何にするのか。」という簡単なことを聞いているだけなのに。

 さらに、ホテルで毎日見るイギリスのトップニュース。英国航空の飛行機に何かがあったらしいけれど、そのきんぱく感は伝わってくるのですが、ニュースの内容はまったく理解できませんでした。世の中で起っていることがわからないことは本当に不安でした。

 今回イギリスでこのような経験をして思ったことは、自分の言いたいことや聞きたいことが、うまく話せたとしても、その答えや返事が理解できなければ、人とのコミュニケーションはできないということです。つまり、相手と会話をするときに、英語で話す能力が大切かもしれないけれど、相手の英語を聞き取る能力のほうがもっと大切なのです。だから、自分の言いたいことだけを英語で言って、相手の言葉を聞かなかったり、理解できなかったりする人には、本当の意味での人とのコミュニケーションはとれないのです。

 わたしたちの生活でも考えてみてください。わたしたちは、人とのコミュニケーションをとるときに日本語で話しています。もし自分の言いたいことだけ言って、人の話を聞かなければ(聞けなければ)、とても自分勝手な人間としてあつかわれてしまいますよね。そして、そういう人には周りのじょうきょうが分らず、みんなと同じことができません。先生がいくらていねいに説明してもそれが頭に入っていきません。だから、相手の気持ちや周りのじょうきょうを理解して、いっしょに生活している人とうまくやっていったり、毎日の授業の中で新しいことを学び取ったりするためには、人の話をよく聞いて、それを理解できなくてはなりません。あなたがもし自分勝手におしゃべりばかりしていて、先生や友達の話を聞かないとすれば、あなたはイギリスで英語が聞き取れないで困っているわたしと変わりありません。だから、毎日学校で人の話す日本語をよく聞き、理解できるようくんれんしてください。

 人とのつながりを持つ第一歩は、人の話を心で聞くことです。