20年後の温泉旅行


 3学期2日目。数人をのぞき、子どもたちは、少しずつ冷静になってきました。今日、係りや当番や班長を決めたり、係のポスターを描いたり、ドッジボールをして転入生との交流を図ったり、少し授業をしたりして、6時間を過ごしました。

 転入生の女の子もだんだん慣れてきて、周りの友達とも笑顔で話しています。わたしが話しかけると、詳しく前の学校のことを話してくれます。給食室が自校にあったこと、担任の先生がとてもきびしかったことなど、この新しい環境とはとてもちがっていることがわかりました。

 さて、昨日の日記の「8年前の約束」の続きです。としや先生は、とても夢のある約束をして、何人来たかわりませんが、きちんと約束を果たしました。実はわたしも3年前に担任した4年生ととてつもなく先の約束をしています。

 4年生の社会では、ちょうど群馬県について学習していました。群馬県の鉄道や高速道路の授業の時、ただ勉強するのはつまらないので、わたしはあることを企画しました。

 旅行好きなわたしは、群馬県のすべての鉄道と高速道路を通るような9つの旅行コースを考えて、地図上でそれらのコースをたどりました。そしてアンケートをとって、一番人気のあるコースにみんなで行くことを提案しました。それは、できるだけその授業を本気で取り組めるようにするためでした。
 9つのうち、決まったのは『吾妻線で行く 草津・白根の旅』というコースでした。草津温泉に泊まって朝食バイキングを食べるというのに子どもたちはひかれたようでした。
「先生、本当に行くの?」
と子どもたちは目を輝かせて尋ねました。わたしは、
「うん、行くよ。でも、みんなが大人になってから、今から20年後。その時、君たちは30歳で、先生は60歳。絶対おぼえておくんだよ。」
と言うと、子どもたちは少しがっかりしていたようだけれど、楽しみでもあるようでした。

 わたしは、その時退職を迎えます。その時まで元気だ働いていられるかわからないけれど『吾妻線で行く 草津・白根の旅』に行くことを目標にがんばていければと思いました。

 その年の学級文集にもそのツアーのことは載せておきましたが、どれくらいの子どもたちが思い出して、参加するか楽しみです。たとえ誰も来なくても、わたしは一人ででも20年前の約束は果たすつもりでいます。もし、このHPがそれまで続いていたらその結果はお知らせしたいと思います。