日曜当番医のはしご
一昨日の午後、職場で仕事をしていたら、息子から「具合が悪いので帰ってきてほしい。」と電話がありました。息子からはめったに頼りにされないので、よほどのことだと思って帰ってみると、臆病な息子は頭痛がするので医者に行きたいということでした。
いくつかある休日当番医から、どこがいいのかわからないので、一番近そうな街中の医院に行きました。行ってみると予想に反して駐車場には一台も車が止まっていなくて、開業しているのか分からないくらいでした。でも電気がついているので、恐る恐る入っていきました。
待っている患者は0。すぐに呼ばれ、息子は診察室の中へ。この医者、だいじょうぶなのか、不安になり、わたしは待っている間、待合室を見回してみました。洋風建築のきれいな建物、しゃれたソファー、そして、濃い茶色のフローリング。あまり物も置いていないすっきりした待合室は、生活感を感じませんでした。ただ医師の認定証ようなものだけがここは内科の医院だということを証明していました。
ふと気がつくと、わたしたち親子は段差のない待合室に土足で入っていることに気がつき、わたしはすぐにスリッパに履き替えました。息子はすでに手遅れで、診察室で靴を履いたままでした。5分くらい経って出てきた息子に尋ねると、血圧は正常なので血管に異常はなく、原因もわからないということでした。
診察結果については何も説明のないまま、頭痛薬をもらい、会計を済ませ、わたしたち親子は、床を汚したことを謝って出てきました。その医院にいたのは20分くらい。血圧を測ってもらい、薬をもらっただけで不安に思ったわたしたちは、次の当番医へ行くことにすぐ合意して、駐車場を出発しました。
続いて行ったのが、少し郊外の日曜当番医。入った感じは、ごく普通の医院でした。患者は2人。最初に受付で容態を聞かれ、ごく普通に体温を測りました。そして、採尿も。まもなく診察室に呼ばれ、わたしは待合室で一人、また周りを見回していました。いろいろな物が貼ってあり、置いてありました。
その中に、院内報の冊子がおいてありました。学校でいうと保健だよりのようなものです。その中を見ると、過去の季節ごとに発刊された院内報が綴られていて、その時期ごとの病気の情報や健康づくりのポイントなど患者に向けたありとあらゆる情報が掲載されていました。それを見ただけで、医師の認定証が飾ってなくても、そのお医者さんの一生懸命さが伝わってきて、すごく感動しました。
しばらくして息子が出てきて、お医者さんも説明に来てくれました。
「今、強い頭痛薬を半分飲んだので、30分くらいここで様子を見て、あとの半分を飲むか決めます。」
結局ここでも原因はわからなかったのですが、お医者さんは、薬の説明や頭痛が起こる時の血管の様子などくわしく説明してくれました。そして、同じように頭痛で診察を受けに来た患者もいたことも教えてくれました。それだけでも、少し気が楽になりました。
さらに、わたしが、昨日、久しぶりに息子がバドミントンの練習をしたことをつけ加えると、スポーツをする時の水分補給の問題も詳しく話し始め、今日の高橋尚子選手の失敗は、気温が高くなった時の水分補給の仕方を変えなかった可能性があるということまでも説明してくれました。
そして、いろいろ話を聞いてみると、そのお医者さんは、サッカー協会のスポーツドクターでした。日ごろから選手の体の変調に瞬時に対応しているそうです。自身もサッカーをしていて、『サッカーばか』と自分で言っていました。道理でくわしいわけです。
結局、薬を半分飲んでも変わらず、家であと半分飲むことになりました。そして、
「うちでできるのはここまでです。心配なら専門の医者に行ってください。」
と言われ、帰ってきました。
このお医者さんは、自分のできる限りのことをしてくれて、一生懸命説明してくれて、できないことははっきり言ってくれたので、親子ともども安心しました。
最後に院内報について聞くと「新しいのができたら取りに来て下さい。別にかからなくてもいいですよ。」と言ってくれましたが、わたしは「なんかあったら相談しよう。」と思いながら帰ってきました。
医者も患者も、教師も生徒も、店員もお客も、人間同士の信頼関係を作ることが最も大切であることを改めて学んだできごとでした。予定の仕事は半分も進まなかったけれど、いい社会勉強ができた午後でした。
最後に、その医院の待合室に置いてあった健康情報雑誌の中で紹介されていた本『感動のベストセラー』を紹介します。
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よかったら読んでみて下さい。
息子は大丈夫です。今日は、この出会いの感動を伝えるためにこの文章を書きました。