復活した動物園

 昨日、テレビで『復活した動物園』という感動的なドキュメンタリー番組を見ました。

 年間入場者数は250万人以上。北海道旭山動物園は、日本で一、二の人気を誇る動物園です。動物の習性をいかした展示ができるようにさまざまな工夫をこらし、いきいきとした動物の姿を間近に感じられることが評判になり、全国各地からお客さんが集まってきています。しかし、現在のような人気を得るまでには、数々の困難があったそうです。

 旭山動物園が開園したのは、昭和42年。最初は多くの人でにぎわいましたが、長続きはしませんでした。存続の危機に直面した動物園では、いろいろ話し合った結果、生き生きとした動物たちの魅力を人々に伝えることで客を増やそうという意見にまとまりました。そこで、動物たちの生活の様子を最もよく知っている飼育係による動物のガイドを始めました。すると、飼育係の話を熱心に繰り返し聞く人や、質問する人が少しずつ出てくるようになったのです。

 誰もがこのまま順調に行くと思っていたところ、人気者のゴリラが寄生虫による感染症で突然亡くなってしまいます。動物園では、人にも感染する恐れのある病気のことを公表するべきかどうか、話し合いが行われました。その結果、手を洗えば感染は防げることや動物園側でも感染対策をしっかりとることも発表し、事実を公表することにしました。すべての動物の検査も行い、他の動物はウィルスに感染していないことも分かりました。心配していた通り、人間にも感染するかもしれないという不安だけに関心が集まってしまい、客足がまたたく間に遠のき、動物園は廃園の危機に陥ってしまいました。

 「遊園地のように乗り物を増やす」、「動物のショーをする」。危機を乗り切るためにさまざまなアイデアが出されます。でも、旭山動物園は「動物の魅力を人々に伝える」という当初の方針を貫き、飼育係によるガイドを続けました。

 そんなある日、動物園に一個の小包が届いた。箱の中には、動物をかたどったたくさんのパンと「いつもガイドを楽しみにしています。がんばってください」という励ましの手紙が添えられていました。「自分たちがやってきたことはまちがっていなかった」と確信した動物園では、理想の動物園について議論を重ね、そこから生まれたアイデアを実行に移すことにしました。それが現在の成功に結びついているのです。

 この物語から、困難を乗り越える勇気や理想を貫く大切さなど学ぶことができました。

 いつか必ず行きたい旭山動物園。その日まで、新たな困難を乗り越え、輝き続けていて下さい。

「旭山動物園」革命―夢を実現した復活プロジェクト (角川oneテーマ21)

「旭山動物園」革命―夢を実現した復活プロジェクト (角川oneテーマ21)