マイノリティ・リポート

 50年後の道路は、まるでテーマパークのようでした。走っている車が傾いたり、垂直に下りていったりして、ドライブしながら楽しめそうな未来の都市でした。その反面、映画の中には、現代の古い建物の中に今と変わらずに生活している人も出てきました。そして、こういうところにリアル感が感じられました。

 そして、未来も変わらないのは、親の子に対する愛情です。ジョンは、6年前息子を誘拐され、心に傷を負っているため、犯罪防止という仕事に情熱を注ぐのでした。こんな父親の役を演じるトム・クルーズはとてもかっこよかったです。スタントマンを使わない彼の体当たりのアクションもすごかったです。

 この映画、単なるSFサスペンスでなく、近未来からいろいろなことを警告しているのだと思います。例えば、眼球の網膜で人物が特定できるところは、最近問題になっている住基ネットシステムの個人情報の管理ににているところがあります。人間が人間の情報を管理するわけですから、まちがいや悪用もあるかもしれません。知らない間に、防犯カメラで人物チェックをうけていたり、クモの形をしたロボットが家の中に捜査に来たりするなど、自分に置き換えて考えると背筋がゾクッとしてしまいます。そして、何よりも恐ろしいのは、予知能力によって、身に覚えのない犯罪の犯人にされてしまうことでしょう。