ターミナル

 スピルバーグ監督という人物がわたしは大好きです。そして、彼の言いたいことをわざとらしくなく、さりげなく伝える映画のつくり方が好きです。だから、映画から彼の宝石のようなメッセージを探すのがとても楽しいのです。

 人種の混在するアメリカの縮図、そして人が出会い別れる人生の縮図ともいえるターミナル。トム・ハンクスのほとんど英語のしゃべれない外国人の演技がとてもうまくてよかったです。本当のロシア語なまりの英語に聞こえました。それと同時にターミナルで働く人々のお国なまりの英語。アメリカは、こういう外国からの移民によって社会が支えられていることがわかります。

 そして、この映画では、空港警備局員の外国人への法律やマニュアルを厳守し、例外を認めない態度に対する批判を込めて、国籍の違うもの同士の心のつながりをビクターを中心としたターミナルの人間関係を通して表現しています。

 片言の英語のやり取りが生み出すおとぼけの愛嬌と好青年の機転のきいた天真爛漫さ。ビクターを演じるトム・ハンクスは、ごく自然に見る者の心をつかみ、約束を守ることや待つことの大切さを教えてくれ、彼のように待ちわびる人生を生きる人々に希望を与えてくれます。

 フランスのドゴール空港には本当にターミナルに生活している人がいるそうです。空港ってなんでもそろっている町のようですものね。