ビッグ・フィッシュ

 ティム・バートン監督の映像は本当にすばらしいです。心で想像したことが、その通りに、いや、それ以上に美しくスクリーンに映し出されます。毎日の生活の現実は、けっこうつまらないことが多いのですが、それを主人公があんなふうに楽しく話せば、いやなことや苦しかったことなどを忘れ、自分の歩んできた人生が本当にすばらしいものだと感じられるのだと思います。あの父親は、家族を愛し、人のためにがんばる誠実な人でした。でも、子供から見ると、浮気をしていそうな、ろくな仕事もしていない人間に見えます。たぶん一般の家庭でも生きているうちは父の偉大さは分からなくて、亡くなってから父の言葉の意味や偉大さがわかるのだと思います。

 ティム・バートンは、うそのような本当のような話をファンタジーとして、現実の世界を親子の人間ドラマとして描いていました。本当にすばらしい監督だと思います。DVDの特典映像もすごくよかったです。ちなみに、何度見てもわたしは号泣はしませんでした。最も感動したのは、ウィルが父を抱き、川に着くと今まで出てきた人物たちがみんなでむかえたところ。父の歩んできた人生がそこにすべて表れていたからです。そして、葬式後の登場人物と家族がとても楽しそうに話していたところです。きっと父の思い出話で盛り上がり、ウィルが父のすばらしさを再認識したのではないかと思います。