栄光の架橋

だれにも見せないなみだがあった 人知れずながしたなみだがあった
けっしてたいらなみちではなかった けれどたしかにあゆんできたみちだ
あのときおもいえがいたゆめのとちゅうにいまも
なんどもなんどもあきらめたゆめのとちゅう
いくつもの日々をこえて たどりついたいまがある
だからもうまよわずにすすめばいい えいこうのかけはしへと

 3月8日朝の通勤の車の中。わたしは、6年生を送る会の最後の個人練習で、ゆずの『栄光の架橋』を歌ながら、目から涙があふれていました。今までの1年の練習のことや前日かぜやインフルエンザで休んだクラスの5人の子が本番に出られないかもしれないことや家族のことなどを考えながら、この歌詞を歌っていたからです。
 そして、学校に着くとまた慌しい一日が始まりました。かぜやインフルエンザによって6年生を送る会に参加できない子は7人に増えていました。1時間目。一人で言う言葉やハンドベルの代役を立てて、最終練習へ。2年生との合同練習でのできは今までで最高でした。その後、ガラガラにあいたステージの並び方を変えて、いざ本番へ。
 各学年の出し物は、2年生から始まりました。長いお話の『スーホーの白い馬』。一人一人がしっかりとした口調で群読。美しいメロディに乗せた一つ上のお兄さんお姉さんの落ち着いた歌声。約15分間。じっと動かずに全員でがんばる姿に感動しました。
 4年生は、『ごんぎつね』。歌、笛の演奏、群読、演劇を組み合わせた出し物は見事でした。
 そして、1年生。1時間目にはつけなかった花を手につけての2曲の発表。ステージのバックの虹と1年の子どもたち全体が表す虹とぴったり合っていて、すごくきれいでした。終わったあと、たくさんの方々に1年生の一生懸命さに対するおほめの言葉をいただきました。
 3年生は、『とべないホタル』を披露してくれました。クラスごとにぴったりとそろった言葉。迫力のある歌声。そして、美しい映像。『友だちへのやさしさを大切に』というメッセージを伝えてくれたりっぱな演技でした。
 5年生。『アメージング・グレース』と『オーハッピーディ』という二つの英語の歌を見事に歌い上げてくれました。『オーハッピーディ』は、ビデオも見たので1年1組の子はとても親しみを感じながら見ていました。さすが来年の6年生の演技です。
 そして、なんといっても今年の送る会で最高だったのが、やはり6年生の『卒業サンバ』でした。6年生全員がステージの上と下であの『マツケンサンバⅡ』のステップを踏み、笑顔で楽しいパフォーマンスを披露してくれました。その踊りは全員が上手で見事にそろっていたのです。アンコールの『マツケンサンバⅡ』では、松平健に扮する6年のS先生も登場し、D小全員で踊って盛り上がりました。本当にすばらしかったです。ありがとう、6年生と担任の先生。
 その一体感を感じたまま歌った最後の『旅立ち』の合唱は、D小全員の心が一つになった感動的な歌声でした。
 今年の6年生を送る会は、わたしが経験した中で最も盛り上がりを見せ、その幕を閉じました。クラスの7人の参加できなかった子たちに本当に見せてあげたかった。
 最後に涙もろいわたしが、数々の涙のシーンから3つシーンを紹介します。
 まずは、4年生の『ごんぎつね』。昨年わたしが関係した学年の子どもたち。あの子たちが、あの名作を、時には、やさしく、時には、激しく、時には、悲しく、表現してくれました。一人一人の顔を見ながら、声を聞きながら、この1年の成長振りを感じることができ、感動のあまり涙が出ました。きっと今の1年生もこれから一歩一歩成長していってくれるのだと思います。それがこれからの楽しみです。
 次に、1年生。参加できなかった子も多い中、わたしの心の中では、100点の演技でした。手話による『世界中のこどもたちが』も『また会える日まで』も、わたしがこの送る会でいつか実現できるといいなと思っていたものです。そのわたしの夢を、ハンドベル、詩、贈る言葉、手に花をつけた手拍子の演出、ピアノの伴奏など、学年の他の先生方が数々のアイディアを出し合って、一生懸命指導してくれて、そして、子どもたちが自分たちの持てる力を全部出し合って実現してくれました。みんなへの感謝の気持ちでいっぱいです。その素敵な演技を見ながら、学年全員の力が集まってできた喜びと全員の子の子が参加できなかったくやしさを考えた時、涙がこぼれました。
 そして、この6年生を送る会で最高に感動した瞬間は、職員の出し物で『栄光の架橋』を歌い始めた時でした。どこからともなく手拍子が起こり、それが会場全体に広がっていったのです。この瞬間、わたしはなんといい学校で仕事をさせてもらっているのだろうと思い、この会で最大に涙腺がゆるみました。また、間奏での卒業生に関わった3人の先生の言葉。そのやさしさが伝わり、涙する6年生の子どもたちの姿を見たときも、なんとも言えない気もちがこみ上げてきました。
 まだ体調をくずし、苦しんでいる子どもたちがたくさんいますが、この『栄光の架け橋』を歌詞の意味をかみしめながら、思いっきり歌えたおかげで、あと3週間足らずになってしまった残りの時間をまたみんなでがんばっていこうと思えました。

くやしくてねむれなかったよるがあった こわくてふるえていたよるがあった
もうだめだとすべてがいやになって、にげだそうとしたときも
おもいだせばこうしてたくさんのささえの中であるいてきた
かなしみやくるしみの先に それぞれのひかりがある
さあいこう ふりかえらずはしりだせばいいきぼうにみちた空へ

だれにも見せないなみだがあった 人しれずながしたなみだがあった
いくつもの日々をこえて たどりついたいまがある
だからもうまよわずにすすめばいい えいこうのかけはしへと
おわらないそのたびへと きみのこころへつづくかけはしへと


一つ忘れていましたが、1年の出し物で作った横断幕の言葉。
そつぎょうおめでとう!はばたけ6年生(ドラえもんマーク)

栄光の架橋

栄光の架橋