イラク便り
- 作者: 奥克彦
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2004/01/25
- メディア: 単行本
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『イラク便り』。2003年11月29日、イラクで復興人道支援活動を行っていた2人の日本の外交官が銃撃を受け、殺害されました。この本は、その一人、在英国大使館大使(当時、参事官)であった奥克彦さんが、イラク赴任中に綴り、外務省のホームページで公開されたレポートをまとめたものです。
学級通信『わくわく』100号を記念して、中東の大地に散った外交官の思いが行間からにじみ出ているこの本から、イラクの子どもたちについての文章を紹介します。
元気なイラクの子どもたち 平成15年5月14日(水)
茂木外務副大臣一行は2日間の日程を無事終えて、今日は再び陸路でアンマンへ向かいます。バグダッドでの最後の仕事が、サウラ地区の小学校での学用品の配布です。日本政府がUNICEFの拠出した資金で作成された、アルミ製の衣装ケースほどの大きさの箱に入った文房具や、授業で使用する三角定規、分度器などの学用品を子どもたちに手渡していきます。子どもたちはみな、驚くほど順序よく文房具を受け取っていきます。最初に、生徒数855人の男子だけのスーダド小学校で手渡しました。みな、大喜びです。(中略)
旧サッダームシティーはサッダーム・フセインがバグダッド市の建設を進めるために、60年代に貧しい南部のシーア派の人々を強制的に移住させた地区です。あまりにも多くの人を特定の地区に住まわせているために、一部の家庭では寝る場所が十分でなく、寝る時間を交代制にしているようです。今回の戦争の後の略奪も多くはここの地区の住民が関与しているといわれていますが、自分の地区の下水処理ポンプを売りとばさなければならないほどの困窮ぶりなのです。自分自身を略奪してしまっているのです。
でも救いはあります。それは子どもたちの輝く目です。イラクの子どもたちはみなパッチリとした目で生き生きしています。教室は狭く、長椅子に6人、7人がつめてすわって授業を受けているありさまです。これから盛夏に向かい、教室内は60度近くに気温が上がることもあるそうです。もちろん、扇風機すらありません。それでも学校へやって来て、日本の支援にふれてくれれば、いつか大人になってもその記憶が心によみがえるのではないでしょうか。いつの時代にもどこでも、子どもたちの目は純粋に好奇心を語ってくれます。イラクの子どもたちのきらきらした目を見ていると、「この国の将来はきっとうまく行く。」と思えてきます。
劣悪の環境の中でもイラクの子どもたちの輝く目を見て希望を持った奥克彦さんのイラク復興へかけた想い。(ノ-T; 彼の死を無駄にせず、この子どもたちがおとなになった時に、イラクが平和で民主的な国になっていてくれることを祈りたいと思います。イラクという国が新しい一歩を踏み出したこの日に・・・・・・。