ぼくをだっこ、ママわらった

しゅくだい (えほんのマーチ)

しゅくだい (えほんのマーチ)

 1学期に1年1組で読んだ『しゅくだい』という本に関するこんな感動的な記事が載っていました。

 29日に入賞者が発表された第50回青少年読書感想文全国コンクール(毎日新聞社など主催)で、青森県板柳町立板柳東小1年の山内敦生(あつき)君(6)がサントリー奨励賞に輝いた。敦生君の母孝子さん(33)は出産直後に交通事故にあい、重い障害を抱える。課題図書がきっかけで、物心ついてからは初めて母にだっこしてもらった敦生君。感想文では「一回だけでいいからだっこしてほしかったのです。」とつづった。

 敦生君の母孝子さんが車を運転中、事故にあったのは敦生君が生後8カ月のころ。顔がまひし、手でソファをたたくぐらいしか意思を伝える方法がなくなった。

 昨春、入学した敦生君は、友達につばをかける「問題児」だった。担任の佐藤住子教諭(57)が家庭訪問すると、口からだ液を流す孝子さんの姿があった。「お母さんのまねをしていただけなんだ」。そう思った佐藤教諭が「お母さんは後遺症と必死で闘っている」と言い聞かせると、問題行動はすぐに消えた。

 佐藤教諭は昨年5月、授業でコンクールの課題図書「しゅくだい」(宗正美子さん原案、いもとようこさん文・絵、岩崎書店)を読み聞かせた。

 「しゅくだい」はモグラの「もぐ」が主人公。学校で「だっこしてもらうこと」が宿題として出されたが、母親は妹の世話で忙しく、かまってもらえない。遠慮して言い出せなかった「もぐ」が母親に宿題のことをきかれ、事情を知った家族がみんなで「もぐ」を抱きしめるという作品だ。

 佐藤教諭は作品にならって「だっこ」を宿題に出した。敦生君を意識したわけではなかったが「ママは僕をだっこできるかな。」ともじもじする敦生君に気づいた。「あっくんはきっとママにだっこしてもらうと思うよ。」と言うと、敦生君はうれしそうに跳びはねて家に帰ったという。

 言葉を話せない孝子さんは子供をしかる時、つめでソファを引っかいて表現する。家に帰った敦生君が孝子さんのひざにそっと乗った時、孝子さんはソファを引っかかなかった。敦生君は「ママ、ちょっと笑った。ぼくはいっぱい笑った。ママって温かいと思った」と振り返る。

 孝子さんはそれからリハビリに熱が入り、人に支えられながらも歩く足取りがしっかりしてきたという。

 敦生君の感想文はこう終わっている。
 ぼくは、ママにだっこされたことがなかったので、一回だけでいいからだっこしてほしかったのです。でも、一年生にもなってママにだっこしてなんて、はずかしかったのです。
 しゅくだいが、だっこでよかった。(毎日新聞 2005年1月30日朝刊)

 またしてもやられました。(ノ-T;  この親子に力を与えるすばらしい『しゅくだい』でしたね。