心の鬼を退治するために

 1年1組は、現在25名の児童で生活しています。わたしが担任した中では最も人数が少ないクラスだけれど、最もパワーを感じるクラスです。そのパワーを勉強や運動に向けられる子も多くなり、頼もしく感じていますが、まだ、自分のわがままを通したり、人の嫌がることをしたりすることなどまちがった方向に力を使っているもったいない子もいます。このクラスを担当してから、わたしは、「子どもたちの一人一人のパワーが一つの方向に向かって行ったらすごい力を発揮できるのに。」とずっと思っていました。その夢を実現できるチャンスが、来月行われる長なわ大会だと思っています。

 本格的に長なわの練習が始まって1週間。子どもたちは少しずつ上手になってきています。でも、子どもたちの心の中には、みんなの心を一つにまとめるのではなく、バラバラにしようとする鬼がいつも顔をのぞかせます。『ふざけおに』、『なまけおに』、『おしゃべりおに』『よそ見おに』、『わる口おに』、『弱虫おに』など、練習中に次から次へと現れる鬼たち。その鬼たちを退治するために、本来おだやかで優しい性格のわたしの心の中にもっと強力な正義の鬼を無理やり作り上げなくてはいけません。

 練習で強力な鬼になっているとき、わたしはある素晴らしい指導者のことを思い浮かべています。シンクロナイズドスイミングオリンピックチームの指導者である井村雅代コーチ。その壮絶な練習と、妥協も遠慮もない指導法には定評があり、シンクロはオリンピックで正式採用されてから、メダルを逃したことはありません。

・わざと選手のプライドを傷つけることもする。誉められてその状態を維持しようとすることはつらく苦しいので、未熟さを認識して克服してもらいたいから叱る。
・しかった後には必ずフォロー。叱ることとそれを直すアドバイスは一体でなければならない。
・嫌われてもいいから、叱らなければならない。
・コーチは選手に文句やグチを言われてはいけない。コーチ自身も目一杯選手と一緒にやっていれば、選手は何も言えなくなる。
「大嫌いだけど、このコーチについてきてよかった」と最後には思わせたい。

愛があるなら叱りなさい (幻冬舎文庫)

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 こんなにすごい井村コーチの足元にもおよばないけれど、わたしは、これからもみんなの心が一つにまとまれるように、心の中の悪い鬼と対決していきたいと思います。
2月3日は節分の豆まき。みなさんも心の中の鬼をいっしょに退治しましょう。

「いつまでもしゃべってるな。」「よそ見するな。」「ちゃんととべー。」 ――― 「やったあ。全員とべたね。」