とくべつなおかし

 成人の日に、遅ればせながら叔母の家に新年のあいさつに行ってきました。叔母は、10年前、40歳代後半で突然の事故で叔父を亡くし、娘たちも嫁いでいるので、現在は1人暮らしをしています。でも、持ち前の明るさと情の深さで、周りの人々に愛され、多くの人が叔母のところに集まり、いつも叔母のところへ行くと楽しい話題で花が咲きます。だから、わたしたち家族も叔母に会うのが大好きです。わたしたちが行った時も近所の叔母の友人が来ていてとてもにぎやかでした。

 そんな叔母が、いろいろな食べ物を出してくれた中で、ごく普通のお菓子を「これはとくべつなおかしだよ。」と言ってすすめてくれました。車が運転できない叔母は、歩いて近所の店に買い物に行きます。帰りには、いつもその近くに住んでいる小さな女の子が、「おばちゃん。」と言って声をかけてくれるそうです。その女の子のかわいさ、声をかけてくれるうれしさに、時々、叔母は「はい、これ食べてね。」とお店で買った小さな袋に入ったお菓子をあげていたそうです。そのお菓子は、その女の子のお母さんがお礼にくれたものだったのでした。

 その女の子のおかあさんは、タイの国からお嫁に来ている人。そのお母さんが、「わたしの国では習慣がなくてわからなかったのですが、日本では、人から物をもらったらお返しをするという習慣があると近所の人に聞きました。いつもありがとうございます。このお菓子食べてください。」とくれたのが、叔母が「とくべつなおかし」と言って出してくれたお菓子。叔母の温かい心が通じ、日本人の習慣をまねて、お返しをしてくれたタイのお母さんの心。そんないい話を聞き、心が洗われ、目に感動の涙をためながらいただいたお菓子は、格別のおいしさでした。

 タイを初めとする津波の被災地には、世界各国からたくさんの援助の手が差し延べられています。けれども、地震が起きて3週間近く経っても、何の救援物資も届かず、苦しんでいる人々がたくさんいるとテレビで報道されています。そんなニュースを聞くたびに、そういう人々に対して、叔母が女の子に言ったように、「これ食べてね。」と近くまで行って手渡してあげたい気持ちでいっぱいです。またしても、自分たちの無力さを感じてしまいました。せめて、苦しんでいる人々に思いを馳せ、自分たちに何ができるのか考え続けていきたいと思います。最後に、新年早々けんかばかりしている人に一言。

 ともだちにたいしてやさしくすれば、じぶんのところにやさしさがかえってくるのです。もうそろそろ、そういうことがわかってもいいんじゃないんですか。