アテネの夏・ぼくらの夏④

 金曜日は、今年最後の水遊びを楽しみました。みんな、夏休み前よりも、とても水と仲よしになっていました。ということで、今日は、水泳の北島康介選手のお話です。

 2002年釜山アジア大会200m平泳ぎで世界新記録を樹立しての優勝。2003年7月バルセロナ世界選手権100m平泳ぎ、200m平泳ぎで世界新記録を連発し、2種目制覇を達成したのは北島康介選手。一方のハンセン選手は7月のアメリカ代表選考会で、100m、200mで世界記録を更新。北島選手に挑戦状をたたきつけました。

 こうして迎えたアテネ五輪。男子100m平泳ぎ。北島選手はいきなり予選で五輪新記録をマークして準決勝進出。続く準決勝、今度はハンセン選手が五輪新を塗り替えます。北島選手は2位のタイムで通過し、8月15日、運命の決勝を迎えました。

 5レーンの北島選手。スタートは、隣の4レーンを泳ぐハンセンと互角でした。いったん控え前半50mを3番手でターンした北島選手は、水面に浮かぶと先頭に立ち、そこからは貫録の泳ぎを見せつけました。懸命に追うハンセン選手。でも差は縮まりません。タッチはわずかに北島選手が先。オリンピックプールは大歓声に包まれました。水面をたたき、雄たけびを上げる北島選手。栄光を自ら祝福し、喜びを爆発させました。

 「世界一美しい」と表現される北島選手の平泳ぎ。キックの技術は、世界でも群を抜きます。しかし、平井コーチがほれ込んだのは、何よりも北島選手の試合に対する集中力や度胸といった精神面でした。平井コーチはその才能を「試合で獣になる」と表現します。その精神力の強さこそ、北島選手の最大の武器。日本中が寄せる金メダルへの期待と、五輪直前に出現したハンセン選手という最大のライバル。強烈な重圧を一身に背負い迎えた「オリンピック」という大舞台でも、北島選手は屈することなく輝きを放ちました。
「気持ちいい! 超、キモチいいっ!!」
プールから上がり、緊張から解き放たれた北島選手の第一声でした。その後、歓喜に沸く日本競泳チームの輪に戻った北島選手は、チームメイトの目をはばかることなく涙を流したといいます。