深呼吸の必要

 『深呼吸の必要』公開最終日に行ってきました。あまり人に知られていない地味な映画なのでしょうか。観客数は約20人。

 この映画を見ようと思った最初のきっかけは、『世界の中心で、愛をさけぶ』で予告をやっていたからです。ストーリーの内容に惹かれたのもありますが、昨日ご紹介したMY LITTLE LOVERの主題歌がとてもよかったからです。

 物語は2月の沖縄のとある離島。本土とは比べものにならない陽射しが降り注ぐこの島に5人の男女がやってきます。彼らはみな“キビ刈り隊”の募集に集まった若者たち。それは、人手の不足した農家を手伝いサトウキビを刈り取るアルバイト。5人を迎えるのは年老いた平良夫妻と“キビ刈り隊”の常連・田所豊。彼らは豊の指示の下、これから35日間で約7万本のサトウキビを刈り取ることになっていたのです。でも、全くの初心者である5人は慣れない仕事にもたつくばかり。おまけに、先輩ヅラして偉そうに振る舞う豊にも苛立ちを募らせていきます…。

 まず思ったことは、サトウキビを刈り取る仕事はかなり重労働だということです。最初に皮を剥ぎ、上の部分を切り取り、そして、根元から斧で刈り取ります。それを、2月でも日差しが強い沖縄で、1本1本1日中やるのです。この映画では、登場人物たちが労働をするシーンがとても多かったです。でも、徐々に表情が変わっていく姿に感動しました。

 彼らの気持ちや行動を変えた最も大きな要因は、平良夫妻の温かく穏やかな人柄だと思います。刈り取りの期限に間に合いそうにないのに、みんなに感謝する姿や自然に身を委ねて生活するおおらかさに、心が癒されました。

 「ここでは、言いたくないことは言わなくてもいい。それがここのルールだ。」の言葉通り、自分たちの境遇はほとんど口にしない登場人物たち。でも、時折のぞかせる彼らの心に痛みが、とてもせつなく感じました。特によかったのが、『世界の中心で、愛をさけぶ』の主演の長山まさみ。ほとんどセリフがなかったのですが、心に深い傷を持つ少女をうまく演じていたと思います。

 エンドロールで流れるMY LITTLE LOVERの『深呼吸の必要』。その曲が終わり、場内が明るくなるまでは、誰一人立ち上がる観客はいませんでした。とても余韻の残る映画の終わり方だったのだと思います。

深呼吸の必要 [DVD]

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