13 アフターヌーン・ティーはわたしのディナー

アフターヌーン・ティー


 今日は、イギリスの食べ物の話です。料理では、あまり自まんできるものがないイギリスですが、紅茶だけは自まんできるそうで、イギリス人は、本当によく紅茶を飲むそうです。朝起きてすぐ1ぱい。午前10時と午後3時のティーブレイクに2はい。夜ベッドにつくまでに7〜8ぱいは飲むそうです。その中で、もっとも優雅イメージがあるのが、アフターヌーンティーです。

 かつてのイギリスは、1日2食というのがふつうだったそうです。だから、朝食はボリュームのあるイングリッシュ・ブレックファストで、早めの夕食として、お茶とお菓子とサンドイッチなどをいただいたのがアフターヌーンティーの始まりだそうです。

 わたしは、このアフタヌーンティーを飲んでみたくて、大英博物館のツアーにアフタヌーンティーがついているコースを選びました。ガイドさんに連れられて主な有名な展示品を見た後、大英博物館内のレストランに連れて行ってもらって、アフタヌーンティーを注文してもらいました。このアフタヌーンティーのコースを選んだのは、わたしの他にご夫婦が1組。たったの3人でした。このご夫婦は、福島県から来ていて、わたしと同年ぱい。初めてあったけれど、すごく話がはずみ、なごやかなアフターヌーンティーとなりました。彼らは、いろいろな国を旅行しているようで、その旅の話がとても楽しかったのです。彼らは今までアジア各国をツアーに入らず、自分たちで手配して旅行をしてきたそうです。インド・チベット・ネパールなど、気軽にはいけないような国々の話をわたしは興味深く聞きました。特に印象に残ったのは、ある国で奥様が入国手続きの時、ある別室に連れて行かれ、どこかに売られそうになったけれど、持っているお金を全部わたしたら開放してくれたという話でした。

 そして、わたしの旅の話もしました。今回は3回目のヨーロッパで、初めてツアーでなく、自分で手配して旅行をしていることやロンドンの中を移動するのに地下鉄を使っていることなどを話しました。すると、そのご夫婦は、わたしとは反対に、ヨーロッパの旅行でツアーに参加するようになり、ツアーがいかに楽であるかがわかり、不安で地下鉄も二人では乗れず、移動はいつもタクシーだということを話してくれました。アジア各国を旅した彼らが、ロンドンの地下鉄に自分たちでは乗れないという話がすごくおもしろかったです。

 そんな話で盛り上がっていると、アフターヌーンティーが運ばれてきました。わたしとご主人が注文したのは、ダージリンで、奥さんが注文したのがアールグレーという種類の紅茶で、それぞれポットに入ってきました。その他に、ケーキ、スコーン、サンドイッチがついてきてすごくごうかです。これでも大英博物館のレストランはロンドンの中では最低だそうで、他の高級レストランに行くともっとごうかだそうです。

 わたしたちは、こんなごうかなアフターヌーンティーを楽しみながら、もちろんイギリス旅行で食べた食事の話になりました。奥さんがわたしに
「旅行中何かおいしいものを食べましたか。」
と聞くと、わたしは、
「この旅行で一番おいしい食事は機内食です。イギリスに来て、朝は日本から持ってきたレンジで温めるレトルトのぞうすいとカロリーメイトで、昼は観光地の売店でサンドイッチとコーヒー、夜はこれまた日本から持ってきたカップヌードルを食べていました。」
イギリスの取材に来るにあたり、出張費が出るわけでもなく、貧しい生活の中からやっと旅行費をしぼり出してきたので、わたしは物価の高いイギリスでレストランに入るわけにはいかなかったのです。すると、奥さんが言いました。
「じゃあ、これが今までで一番ごうかな食事?」
わたしは、
「そうです。これがこの旅行で最高の食事です。」
と答えました。お昼にレストランでおいしいランチを食べたご夫婦は、食べ切れなくて残し、午前中にロンドン塔の売店でサンドイッチの立ち食いをしたわたしは、出されたものを一つも残さず全部きれいに食べました。
だって、このアフターヌーンティーが、今回イギリス旅行でレストランで食べたたった一度きりの貴重なディナーだったからです。

 こうして、福島県のご夫婦との楽しいアフターヌーンティのひとときは終わりました。

 さて、3年2組のみなさんにも、イギリスのアフターヌーンティーを楽しんでもらいたいと思います。2月13日の5時間目に使う紙コップなど紅茶が飲める入れ物1つと紅茶に入れたい人はさとうとかき回すものを持ってきてください。お菓子はごうかではありませんが、こちらで用意します。