君がいるだけで〜C君の卒業式


 今日は、昨年度担任をした子どもたちの卒業式でした。本校で卒業式に参加するのは、卒業生以外に5年生だけです。

 今年、わたしは3年の担任だったので、いつもとちがい担任として卒業式の練習にかかわることはなかったので、いつもより気楽な気持ちで、自分の担任した子どもたちの卒業式に参加することができました。

 わたしが、昨年担任したクラスの子どもの中にC君がいました。C君は極度の恥ずかしがり屋で、人前で発表したり、音読をしたりすることはできません。また、運動会の時など、大きな行事では緊張しすぎて、参加していても自分の出番になると具合が悪くなってしまう子でした。

 6年生になり、卒業式が近づくと、やはり緊張のせいか、練習には参加できなかったようです。みんなの前で壇上で返事をすることにたいへん抵抗を感じていたのです。周りの先生方もC君にいろいろ声をかけて、説得をした結果、壇上に上がらなければ、卒業式に参加するということになりました。それでも、当日にならなくては、C君は卒業式に参加できるか分かりませんでした。

 卒業式が、始まりました。わたしは、卒業式が始まってからしばらくしてC君のことを思い出しました。「C君は入場できたかな。」と思いながら、C君のクラスを見ると、一番前でちょこんと座っていました。わたしはホッとしました。

 いよいよ卒業証書授与の時が来ました。みんな大きな声で返事をしながら、壇上で証書をもらっています。C君の番が来ました。C君は約束通り、返事はしないで座ったまま自分の名前を聞いていました。

 C君にとってはそれがせいいっぱいの卒業式でした。
「C君、君がそこにいるだけで、うれしいです。卒業おめでとう。」
とわたしは心の中でお祝いしました。