名物にうまいものなし

 名物にうまいものなし。フランス版の北の横綱ともいえるのが、「モン・サン・ミッシェルのオムレツ」。南の横綱は、「マルセイユのブイヤベース」を挙げたいと思います。

 なぜオムレツが名物かは説明があると思いますが、説明しても「おいしくない」といわれます。皆さんたいてい硬直してますよね。それに高い!!私たち添乗員は世界中でおいしくないものを食べているので慣れているのですが、期待してくるお客様はお気の毒。

 あのオムレツを作り始めたプーラールおばさんはやり手だと思います。たいていの人がモンサンミッシェルの巡礼は一度でしょう。名物のオムレツは一度は食べたいけれど、一度で充分。卵の原価なんて知れているし。今でもモンサンミッシェルのお土産物屋さんやレストランは彼女の子孫、あの村の村長も子孫だそうです。

 私があの地方で好きなのはシードルです。最初は日本のシードルと違って甘くないのでおいしくないなあと思っていました。でもブトウ酒の造れない寒い地域でもりんごなら採れるので、その名産のりんごを使ってのお酒がシードルで、りんごは糖度が低く、悪くなりやすいので、日本のシードルは火を入れたり、糖度を増したりしていると後で知ってから、本場のシードルが好きになりました。

 一番最初に来たときには知らなかったのです。シードルのことも、オムレツの由来も。自分が知らないため、もちろん説明もしていません。あの時のお客様には悪いことをしました・・・。