アジア・フィルム・フェスティバルに行って

 2002年2月24日から3月16日まで、前橋の群馬会館ホールで「アジア・フィルム・フェスティバル」が開催されました。普段は見られないアジア各国の映画が、毎日上映されていました。

 わたしは、3月3日と15日にそのアジアの映画を見に行って来ました。

 3日に上映されたのは、イランで制作された『柳と風』という映画でした。ちょうど5年の社会科で勉強した「ラムサール条約(水鳥の生息地である湿地を守る国際的条約)」のラムサールのあるイラン北部が舞台の映画でした。この映画を見て、イランの南部はほとんど雨が降らないけれど、ラムサールのある北部はたくさん雨が降ることがわかりました。だから、湿地もでき、湿地を守る国際条約が開かれたのだと思いました。

 話は、学校のガラスを割った子が、先生に怒られました。彼は友達のお父さんにお金を借り、そのお金で遠くのガラス屋からガラスを買いました。そして、強風の中、自分の手で大きなガラスを学校まで運んで来ました。一人で新しいガラスを入れ替えようと思ったら、強い風が吹いてきて、ガラスが落ちて割れてしまって、もう一度買いに行くという話です。日本の小学校の道徳のテレビにも出てこないようなシンプルなストーリーですが、イランの風景の美しさがよくでていた映画でした。見ていて、強風の高原で一生懸命ガラスを運ぶ少年を、いつの間にか一生懸命応援していました。この映画を見て、イランの国も人もとても身近に感じられるようになりました。

柳と風 WILLOW AND WIND [DVD]

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 15日は、5年4組の女の子、DEの故郷のスリランカの映画「満月の日の死」というのを見ました。これは、DEの国の映画なので、ぜひ見たいと思って行きました。

 スリランカ北東部では、分離独立を主張するタミル人とそれを阻止しようとする政府軍との戦いが続いています。盲目の老人ワンミハーミの息子は、政府軍の兵士としてその戦争に参加しました。やがて、老人の元に息子の棺が届き、1万ルピーの賠償金が政府から支給されるという通知も届きました。葬式が終わり、数日してから「もうすぐ休暇をもらって帰る。」という息子からの手紙も届きました。老人は、ずっと息子の戦死を認めることができず、賠償金の受け取りを拒否し続けていました。娘たちやその恋人は、結婚や貧しい生活を支えるためにも、金を受け取るよう働きかけるのですが、老人は息子の戦死を信じることができません。老人は、今でも息子は生きていると信じて疑わず、埋めてある棺を掘り始めました。驚いた家族や近所の人たちが集まり、棺を掘り出すと、なんと息子の遺体の代わりに木が入っているだけでした。賠償金はもらえなくなったけれど、老人は、息子が生きていることを確信しました。最後のシーンは、川で遊ぶ子どもの声を聞き、微笑みながら、希望に満ちた顔ですわっている老人の姿で終わりました。

 この映画を見て、結局、どの国の、どの時代も、戦争の悲惨さと親の愛は、変わらないことが実感できました。国籍や民族の違いは関係なく、人間はみな同じなのです。

 5年4組には、スリランカのDEをはじめ、ベトナムの子とブラジルの子が、日本の子どもたちといっしょに勉強しています。毎日いっしょに生活していると、国籍の違いなどまったく感じなくなってしまいます。

 わたしは、日本の子どもたちに教えるのと同時に、他の国の子にも日本の勉強を教えることに幸せを感じています。それは、日本の文化の特色を彼らに伝えることができるからです。

 国語の言葉の学習では、日本語独特のいろいろな読み方の漢字の例や二つ以上の漢字が組み合わさってできている複合語。相手や場に応じて使い分ける敬語など日本語のすばらしさを教えることができます。そして、「大造じいさんとガン」や「わらぐつの中の神様」では、物語を通じて、日本人のこころや伝統的な日本の風習などを伝えることができます。また、社会では、昔からの農業や最先端技術の工業、森林の多い日本の国土のすばらしさなどを、家庭科では、ご飯と味噌汁の作り方など、日本でしか学べないことを彼らに伝えたりすることができるからです。つまり、毎日、国際親善をしているような生活なのです。

 彼らは、日本の学校で学習し、そこで吸収したものを家族や国の友達にきっと伝えてくれることでしょう。そうすれば、日本のよさを理解してくれる人が、少しずつ増えていくと思います。日本人の長所や考え方が、世界に広がっていくことは、うれしいことです。だから、他の国の人となかよくすることは、とてもいいことだと思います。もし、クラスの外国から来た友達に意地悪をしたり、悪口を言ったりすれば、日本のイメージは悪くなり、日本人は他の国から相手にされなくなるでしょう。でも、外国から来た子に親切にし、仲よく生活すれば、きっと世界の中でも日本人は親しまれ、後で親切が戻ってくることでしょう。それが少しずつでも世界の平和につながっていくのだと思います。

 これからの時代は、ますます世界の国々との結びつきが強くなっていきます。どの国も外国と仲よくしていかなければ、生きていけなくなります。だから、平和な国に生活するぼくたち日本人は、国と国との架け橋になっていかなければならないと思います。そう考えると、毎日の生活の中で、外国の友達と仲よくなるチャンスが与えられているのは、とても幸せなことだと思います。

 日本は、経済的にも比較的恵まれていて、今のところ平和な国ですが、他の国に学ぶこともたくさんあります。日本のよさを伝えていくとともに、相手の国のよさを知ることもとても大切なことだと思います。ですから、今回、アジアの映画を見る機会があったことは、わたしにとって本当によかったと思います。

 みなさんもどうか外国の文化に積極的に親しんで下さい。特になじみのない文化に。そして、身近な外国の人たちと仲よく付き合って、日本のよさをたくさん伝えていって下さい。