7 ミュゼ・ドルセー

 オルセー美術館は、フランス語で「ミュゼ・ドルセー」と呼ばれています。当初、この建物はパリとジャンヌ・ダルクの故郷のオルレアンを結ぶ鉄道の駅で、しかもホテルつきのパリ中央駅でした。建物につけられている2つの大時計には「パリ〜オルレアン」と今も刻まれています。人々の出会いと別れの場として、映画の名場面にも登場したオルセー駅。しかし、運営困難のためか、最初から美術館となる運命にあったのか、たった39年間で幕を閉じました。その後長い間放置され、10年間の改装期間を経て、オルセー美術館として再び日の目を見ることになったのは、1986年のことでした。

 わたしが目指していたところは「ミュゼ・ドルセー」の3階でした。ルノワールゴーギャンセザンヌゴッホ・モネ・ロートレックドガなど印象派の世界の名画がそろっていて、絵画に興味のない人でも心をひきつけるような作品の宝庫でした。わたしは、1・2階を一通り見た後、心を踊らせて3階に登って行きました。3階に着くと、今までの階よりもずっと混んでいました。モネ「日傘の女」。ゴッホ「オーベルの教会」。ルノワールムーラン・ド・ラ・ギャレット」。ゴーギャンタヒチの女」。そして、6年4組で紹介したドガ「舞台の踊り子」やロートレック「踊るジャンヌ・アヴリル」など、どれをとっても一度は目にしたことのあるような有名な絵ばかりでした。人々は、それぞれの絵に吸い込まれるように見入っています。わたしも、この3階にずっといられたらと思うくらいの大きな感動を覚えました。

 絵だけでなく、この3階からは、窓からのながめもすばらしいのです。セーヌ川対岸のルーブル美術館とチュイルリー庭園。遠くにはモンマルトルの丘のシンボル、サクレ・クール聖堂が見えます。しかも、美術館の大時計の中に見える大聖堂は、パリのどこからも見られない景色です。

 わたしは、この3階の絵と景色をゆっくりと楽しみ、とても満足してオルセー美術館を出ました。そして、パリに来た目的をほぼ達成したので、あとは、市内の有名な場所を目指して徒歩で出発しました。

(『メゾン・デュ・ショコラ』につづく)