おわりに 〜夢に向かって 〜

 1997年秋。今回の旅はこのころから始まっていました。

 この時、テレビで『深夜特急』というスペシャル・ドラマが放送されていました。このドラマの主人公でもある沢木耕太郎の原作の紀行文をドラマ化したもので、インドのデリーからイギリスのロンドンまで乗合バスに乗っていく旅の物語に、ぼくははすぐに心を奪われてしまいました。

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 インドに行く前の香港、バンコク、ペナン、シンガポールでの生活。デリーを出発してからシルクロード、トルコ、ギリシャ、地中海、さらに南ヨーロッパからロンドンまで続いた旅。主人公が初めて体験することや人々との出会いが、まるで自分のことのように思われ、ぼくは、ドラマの中で旅をしていました。そして、原作の本を読んでみて、ぼくは、自分自身で外国旅行をして、紀行文を書くことに憧れるようになっていました。

 1999年春。ブルーム・オブ・ユースの『ラスト・ツアー』が始まると、忘れかけていたその夢が少しずつふくらんでいきました。ブルームの二人がロシアを旅している間には、『道浪漫』という旅の番組の中で、アコーディオン奏者のcobaがイタリアの映画監督フェリーニと映画音楽の巨匠ニーノ・ロータのゆかりの地を訪れていました。cobaは、イタリアの有名な映画の舞台となった地で、アコーディオンでその場面に流れる曲を演奏していました。また、coba自身のオリジナルの曲でイタリアのサーカスと共演をしていました。それを見て、ぼくは大きな感動を覚えました。

ブルームオブユース「ラストツアー」

 また、その年の8月11日には、偶然、余ったチケットがあるという話が舞い込んできて、松任谷由実の『シャングリラ』のコンサートに行くことになりました。そこで見たものは、ロシアのシンクロナイズド・スイミングとサーカスとの共演は、一見の価値がありました。1999年になって、外国と日本人アーチストの融合のすばらしさに何度となく心を動かされ、ぼくはすぐにでも外国文化にふれたい気持ちでいっぱいでした。

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 そんな時、新聞の広告欄の『魅惑の東欧8日間』という文字が目に入ったのです。手頃な価格と自由時間の多いツアー。ぼくは、
『これだ。』
と思い、迷わずこのツアーに申し込みました。そして、2年半前から、思い続けていたこの紀行エッセイに取りかかることができました。

 今、『2000年の東ヨーロッパから』を書き終えることができ、心で思い続けていると、いつか夢が実現することを、確信できたような気がします。夢を持って、それに向かって努力していれば、必ずチャンスが訪れ、夢がかなうときがやってくるのです。読者の皆さんも、ぜひ大きな夢を持って、未来に向かって突き進んで行ってもらいたいと思います。

 この紀行エッセイを発行するにあたって、たくさんの人々にお世話になりました。旅のよきアドバイスをしてくれたツアーコンダクターのGOTOHさん。旅行に同行し、ぼくを支え、いい写真を提供してくれた中年H氏。旅行中、家を守ってくれた家族。そして、この紀行エッセイを読んでくれた読者のみなさん。本当にありがとうございました。

(終わり)