運命の１０月４日

　いよいよ当日。ぼくは、朝からなんとなく落ち着かない。テレビでは、『ブルーム・オブ・ユース、バンド生命の危機』という記事を取り上げて報じている。他人事ながら、６ヶ月間もいっしょに旅をしてくると、二人の運命が自分のことのように心配になってしまう。家を出るまで迷って、そして、決めた。

　やっぱり武道館へ行くのはやめよう。自分一人が行ったところで結果は変わらないし、次の日が仕事ということも気になる。そして、仕事に出発。

　でも、今までに行きたかったコンサートを行くのをやめて、何度後悔したか。

　久保田利伸がまだ有名でないころ、前橋市民文化会館に来た。ぼくは、もらったチケットがありながら、行こうと思っていたがやめた。その直後、彼の曲が大ヒットして全国的に有名になった。今では、ニューヨークに住んでいて、前橋には二度と来ない。

　世界で活躍中だったオルケスタ・デ・ラ・ルスが、高崎に来た時も、行きたかったけれどやめた。あとでコンサートに行った人に聞いたら、すごくよかったそうだ。その後、彼らは解散し、今ではもうコンサートは見られない。

　最近では、アコーディオン奏者のcobaが高崎に来た時も、行きたいと思っていたが、行けなかった。今では、cobaはテレビに出るようになって、群馬に来るどころではない。

　そんなことを考えていると、やはり「行こう」という気持ちが強くなってくる。もう頭の中はどうしようかと迷う気持ちでいっぱいなっていた。しかし、仕事が始まると忙しくて、勤務終了時間までそのことは思い出さず、やはり武道館へは行けなかった。

　そして、テレビの放映を待つことにした。

（『旅の終わり』につづく）