最後の心配

 最初から心配だったこの旅の最後の心配。10月4日(月)午後7時30分。日本武道館に本当に観客が集まるのか。ブルーム本人がどんなに努力しても、達成できるかは、誰にもわからなかった。

 番組の司会者であるチューヤンは、もうすでに観客を集めるために、連日プロモーション活動に励んでいた。自分で手作りしたビラ配りや入場の約束の署名集めなど、その活動は、コンサート開演直前まで続けられた。

 ぼくは、もしかしたら1万人は集まらないかもしれないと思っていた。もし集まらなかったら、別所君と松ケ下君のこの6ヵ月の努力は水の泡になってしまう。そして、血の滲むような思いをして完成した『ラストツアー〜約束の場所へ』の曲もCD化されず、ブルームの二人も今後音楽活動はできなくなる。そう思うと、彼らが気の毒で、いても立ってもいられない気持ちになった。

 10月4日、月曜日。ラッキーなことに、3時以降は仕事の方は都合をつけようと思えばつけられそうだ。休暇をもらって行けば、コンサートにはぎりぎりで間に合うかもしれない。きっと会場はガラガラだから、スンナリ入れるかもかもしれない。家族にそのことを話したら、
「行ってあげなよ。」
と答えが返ってきた。

(『運命の10月4日』につづく)