残酷なテレビ局

 ストリートライブでお金を稼ぎながらの9300kmのシベリア鉄道の旅。聞いただけでも気の遠くなるような信じられない旅だ。

 モスクワから始まって、テレビに映るのは、彼らがストリートライブをしていてもロシアの人に見向きもされない映像が多かった。ぼくは、テレビだからきっと映っていない時は、おいしい食事をして、ホテルに泊まっているのではないかと内心思っていた。

 しかし、いつしかそうではないと思うようになっていた。それは、彼らのふっくらした頬が、少しずつこけていき、見た目もみすぼらしくなっていたことでわかってきた。彼らにわからないところでは、きっと番組スタッフの考え出された展開もあっただろうが、しかし、本人たちに対する番組側からの助けはなかったと、後で別所君も言っていた。

 彼らが、お金がかせげなくて、泊まるところも食べるものもないときや強盗に襲われて無一文になってしまったとき、わたしは 『本当にこの旅は続けられるのだろうか。』と心配した。一週間に一度、家の中でテレビを見ているぼくがそう思うのだから、実際に旅をしている彼らは、どんなにか不安な毎日だっただろう。

 わたしは、心の中で彼らを応援した。ストリートライブが成功したときは、いっしょに喜び、ホッとした気持ちになり、テレビのスイッチを切った。

(『ロシア人のイメージ』につづく)