感謝の心

菜の花畑


 木曜日の仕事帰りの車の中。ラジオでオペラ歌手の中島啓江さんがお母さんの話をしていました。「啓江」と書いて「けいこ」と読むのは、中国の揚子江沿いで生活したことのあるお母さんが、そのときに中国の人々から受けた好誼に感謝する意を込めて、揚子江の「江」にちなんで名付けたからだそうです。そして、中島さんは自分の名前は命の名前だとし、毎年誕生日にはお母さんの子どもであることを感謝しているそうです。その理由とは……。

 中島さんのお母さんは、終戦後中国から引き上げる時にお世話になった中国の人々にお礼を言いに行っている間に日本への引き上げ船が出発してしまったそうです。でも、結局その船は日本にたどりつかなかったそうです。もしお母さんに感謝の気持ちがなかったら、その船に乗っていて、お母さんは日本に戻れず、中島さんは今ここにいなかったと話し、感謝の気持ちを大切にしていたお母さんに感謝をしていました。次の引き上げ船の出発の時、お母さんが列に並んでいると、5人前で船がいっぱいになり、今度もまた乗れなかったそうです。それでも、お母さんはがっかりせず、「もう一度お世話になった人々にお礼が言える。」と言って、中国の人々にお礼を言いに行ったそうです。

 どんな状況の中でも感謝の気持ちを忘れない中島さんのお母さんの話にとても感動しました。スピードの速さや効率性や要領のよさばかりが優先される現代の生活で忘れがちな感謝の心。偶然聞いたラジオ番組からその大切さを改めて考えることができ、本当によかったと思います。