地下鉄(メトロ)に乗って

 『地下鉄(メトロ)に乗って』という映画を見ました。浅田次郎原作のファンタジーでした。

 この映画は、少年時代の主人公小沼真次が兄と弟とキャッチボールをするシーンから始まります。

 現在の真次は、女性用下着を売り歩くセールスマン。真次の父親である小沼佐吉は、世界的に有名な「小沼グループ」の創立者。真次の兄は、昭和39年の東京オリンピックが始まる5日前に、父と大学進学の問題で口論になり、家を飛び出し、そのまま交通事故に遭い、亡くなってしまいます。その後、真次は、父親の母や兄への傲慢な態度に反発し、高校卒業後、家を飛び出していたのでした。

 ある夜、仕事帰りに永田町駅の地下鉄の階段を上ると、そこには30年前の1964年(昭和39年)の風景が広がっていました。そこで真次は、事故当日の兄を目撃します。

 その後、真次は、地下鉄に乗って、現実と過去を行き来しながら、兄の過去、そして、父の生き様を目撃していきます。父への反発心がなくなり、感謝の気持ちに変わっていきます。

 親の子に対する思いが伝わるのが、子どもが親の立場になった時が多く、それもわからないまま一生を終わる人も多いと思います。父の横暴さに隠された真実が実際に見られた真次は幸せだったと思います。