為末大・走りの極意

 今朝、NHKの『課外授業ようこそ先輩』を見ました。朝から涙でした。

 今回は、プロ陸上選手の為末大選手が母校の広島市立五日市中央小学校を訪ね、5年生の子どもたちに自分の限界を超える極意を教えました。

 ハードル走で活躍する為末選手は、これまで専属のコーチをつけずに独学で走り方や練習方法をあみ出してきました。

 かつては、筋肉をつけ、欧米型の走法を追求したこともありましたが、体格で劣る日本人がまねをしても勝てないことを痛感し、自分の体を見つめ直して、体に合った方法を模索しました。

 今回の授業で為末選手が子どもたちに教えたことは、走ることを通して自分の限界を超えること。100メートル走のタイムを1カ月で1秒縮めることを目指しました。

 為末選手があみ出した速く走る極意。それは忍者走法でした。骨盤が地面に対して垂直な欧米人に対して、日本人には猫背の人が多く、骨盤が後ろに傾いているそうです。だから欧米人のようにももを上げて走ると、骨盤が上下に動いてしまいます。でも、すり足の忍者走法になると骨盤が安定して前に進みやすくなるのだそうです。


 そこで、為末選手は、子どもたちに忍者走法を身につけさせるために、体育館をスリッパで走る練習を取り入れました。

 さらに、子どもたちの走り方を分析した上で3つのタイプに分け、それぞれにちがった練習方法を指導ました。

 歩幅の狭いグループには、ペットボトルを等間隔に置いた走る練習を、足の回転の遅いグループには、後ろ向きに走る練習を、上体がぶれるグループには、トランポリンでバランス感覚を養う練習をするよう指導しました。さすが自分で練習法をあみだしている為末選手です。独特ではありますが、理論にかなっている練習法でした。

 発表会の当日、全校児童、保護者、地域の人々がたくさん集まりました。為末選手は、緊張の中、子どもたちに興奮するよう指導。これだけは、欧米で学んだことだったそうです。

 そして、本番。子どもたち全員が、自己新記録を更新しました。でも、目標の1分を縮めた子は、29人中10人でした。為末選手は、くやしがっている子どもたちに言います。
「一生懸命やって、目標を達成することもある。でも、一生懸命練習しても、うまくいかなかったり、記録が伸びなかったりすることもある。そんな時でも、投げ出さないこと。中学へ行っても高校へ行っても、そういう時がくるかもしれない。でも、今日の日を思い出して、がんばってほしい。」

 為末選手の人柄と経験からにじみ出るすばらしい言葉。心から感動しました。

 こうして、為末選手は練習に戻りました。北京オリンピックを目指して。為末選手には、これからもずっとがんばってほしいです。

為末大 走りの極意

為末大 走りの極意