硫黄島からの手紙

 9日の夜、『硫黄島戦場の郵便配達〜』というドラマを見ました。

 『硫黄島』。たしか高校の時、硫黄島から生還した古文の先生が、よく戦争の話をしてくれたことを思い出します。あの頃は、硫黄島の場所も鹿児島県あたりだと思っていたり、話の内容もぼんやり聞いていたりしていたりして、わたし自身関心もあまりなかったように思います。

 面積わずか22平方キロメートルのこの小さな硫黄島は、第二次戦争中、もっとも過酷な戦地だったと言われています。灼熱地獄に苦しみ、兵器も食料も、そして一杯の水さえも口にできない悪条件の中、一日でも長く生き延びて「敗戦」を遅らせるために戦った兵士たち・・・。そんな彼らの心を支えたのは“手紙”でした。文字通り家族を守るために戦った男たちが、当の家族へ宛てて書いた手紙。そこには勇ましい言葉や恩着せがましい文字、悲壮な語句は一切無く、家族の暮らしを思いやる当時の日本の軍人とは思えぬ優しく細やかな気配りで溢れていて、見ているわたしたちの心を揺り動かします。

 そんな兵士たちの手紙を硫黄島に届けた男がいます。木更津航空隊・少尉の根本正良。当時、若干23歳のパイロットだった根本は、硫黄島への緊急物資輸送を命ぜられ、一式陸攻(=輸送爆撃機)の機長として、硫黄島に手紙を届けます。学徒出身の根本が初めての硫黄島で見たものは、痩せ細った兵士たちの悲惨な姿、そして、家族からの手紙をむさぼり読む喜びに満ちた表情でした。

 帰り際、家族への手紙を渡された根本は、以後、命を賭けて硫黄島と本土を往復し、血染めの手紙を届けようとします。しかし、硫黄島はすでに本土からの支援もままならない“見捨てられた島”と化していたのです。本当に悲惨な状況でした。

 息子があの頃のわたしの年齢になった今の時代に、ドラマで硫黄島のことを知ることができるなんて思いもよりませんでしたが、当時古文の先生が伝えたかった戦争の惨さが今になってわかります。そして、そんなに過酷な状況でも、希望を与えてくれたのは、家族の言葉であることが本当によくわかりました。家族の絆の大切さと平和のありがたさをかみしめて、これからも生活していきたいと思います。そして、土曜日から公開になった映画『硫黄島からの手紙』も見てみたいと思います。みなさんもぜひご覧下さい。

硫黄島~戦場の郵便配達~ [DVD]

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