ひまわり

　この映画のオープニングに地平線のかなたまで続く一面のひまわり畑が登場します。そして、バックに流れる物悲しいヘンリー・マンシーニのテーマ曲。この美しいシーンで監督は、多くの戦争の被害者の悲しみを表していることを映画の途中で気づきました。ジョバンナが夫のアントニオを探し求めてひまわり畑にたどり着いた時、同行したソ連の外務省の役人が「このひまわり畑の下には、敗走したイタリア兵やロシア捕虜や農民の無数の死体が眠っている。」と語ったからです。

　戦争によって引き裂かれ夫婦。夫の帰りを待ち続ける妻。死の寸前で命を助けられた娘と家庭を築く夫。お互い生き残って逢えても、元の生活に戻れない状況は、戦場のシーンを映し出すよりももっと残酷に感じました。そして、再びエンディングに登場する美しいひまわり畑を見ながら、悲しみをこらえることができませんでした。

ひまわり《デジタルリマスター版》 [DVD]